防音工事について

「音漏れゼロ」を目指す防音工事

2017年12月19日 13時30分

「内から外への防音」に再び話題を戻しますが、ここからは、コンサートホール、レコーディングスタジオ、ライブハウス、ライブ演奏付き飲食店、
カラオケスナック、カラオケボックス、あるいは自宅の一角の完全防音化など、大音響を強力に遮音する必要がある場合の防音工事のお話です。
 それらのケースでは、高遮音性に加えて高音質も求められるので、以下のような点に配慮して工事を行います。
           ・遮音 …比重の高い壁材を用いる、壁を厚くする、空気層を設ける。
           ・吸音 …グラスウールなど吸音性にすぐれた素材を使う。
           ・防振 …浮き床にする、制振ゴムを使う。
           ・反響調整 …吸音板や反響板により調整する。
 既存のスペースに対する防音工事は、以上のすべてに関して高いレベルで実現しなければなりません。
そこで一点、注意なのですが、一般の工務店、建設会社、ハウスメーカーには、防音工事はできません。
ノウハウがないからです。防音工事を発注するなら、かならず防音工事専門の会社に依頼してください。
 

Box in Box工法

 完全防音には「スキ」が許されません。防音措置がされていない開口部が少しでもあると、そこから音は漏れてしまいます。
 したがって、壁・天井・床の6面と窓はもちろん、ドア、換気口、エアコン送風部といった細部にいたるまで、すべて配慮しなければなりません。
 唯一、スキを許さない工法といえるのが「Box in Box工法」です。
 大まかに言うと、ひとつの部屋の中にすっぽり収まる、もうひとつの部屋を作るということです。
 部分ごとにポイントを押さえていきましょう。
 
 浮き床にするのが一般的です。下端に制振ゴムがついた、断面直径1センチ未満、長さ10センチ程度のステンレス柱をたくさん使って、
 元の床との間に空間を作りつつ床材を支える形です。
 これの主目的は「防振」です。バスドラムなどによる低周波音は、「音」としてのみならず「振動」としても伝わります。
 これは通常の遮音材では抑えきれません。制振ゴムが振動を有効に吸収します。
 さらに高レベルの制振性を求めるなら、グラスウールなどを敷いた上にコンクリートを打った「湿式」と呼ばれる浮き床も選択できます。
 
壁と天井
 元の壁から10センチほど浮かせた位置に石膏ボードを展開し、空気層を設けます。空気層の遮音性に加え、
 石膏ボードの壁側にグラスウールを貼って吸音性も高めます。
 
ドア
 スチール製や木製の「防音ドア」を使います。重くて分厚い板が強力に音を遮断します。
 ドアノブ側の枠はゴムパッキンでシールドし、ドア下のすき間はスポンジのついたテープなどでふさぎます。
 
 既存の窓に加えて、内側のBoxにも窓をつけて二重窓とします。
 さらに「防音カーテン」をつける方法もあります。吸音性の高い素材で織り上げられたカーテンです。
 
換気扇、換気口
 開口部を完全にふさぐカバーのついた換気扇を使う方法もありますが、これは事実上、音を出している間はほとんど使用できないことになります。
 ですから、少し価格が高くなってしまうのですが、同時吸排気型換気扇の方がオススメです。
 同時吸排気、つまりひとつの穴で同時に吸気と排気を行う換気扇です。
 さらに、換気口の外側に、分厚い吸音材を内蔵した防音タイプのベントキャップを接続すれば、遮音性が高まります。
 
エアコン
 最近のエアコンは、静音性を意識した製品が増えていますので、あまり問題にはなりません。
 が、必要ならダクトに吸音材を仕込みます。
 
反響調整
 反響が強いと自分が出した音の反響音に混乱させられ、パフォーマンスが悪化します。
 密閉型ヘッドフォンでカットできれば理想ですが、数人でのセッションだと大きなスタジオでないと難しいでしょう。
 その場合は、必要に応じて吸音板や反響板を配置します。