屋内に防音室を設置する作業も広い意味では「防音工事」ではあります。
しかしここでは、家屋や部屋そのものに手を加えて防音性を高めるものを「防音工事」として考えます。
防音室の目的が「屋内の音を外に漏らさないようにする」ことであったのに対し、防音工事には、
「屋外の騒音が屋内に侵入してくるのを防ぐ」という目的も加わります。
防音室の延長で「内から外への防音」をはかる防音工事は、同時に「外から内への防音」の役割も果たします。
これに加えて、「外から内への防音」だけを目的とした防音工事もある、というわけです。
では、まず「外から内への防音だけ」を目的とした防音工事からみていきましょう。
屋外からの騒音を抑える防音工事
鉄道や幹線道路のそば、あるいは空港の近くに住んでいて、列車・自動車・飛行機の騒音が、家の中にいても会話ができないほどひどい……
残念ながら、いまだに時々聞く話です。
そのような騒音に対する防音は、騒音の程度に応じて、安価・容易に済むものから、それなりにお金がかかってしまうものまで、段階的に選択肢があります。
防音シート
まず、ホームセンターなどで売られている「防音シート」を家のサッシのガラスに貼る、という方法があります。
これがもっとも安価で、素人でも何とかできる簡単な対処です。「工事」と言えるほどのものでもありませんね。
しかし、お察しの通り、遮音性能は非常に低いです。気休め程度と言わざるをえません。部屋の中が暗くなってしまうというデメリットもあります。
サッシの改良工事
次に、もう少し大がかりにサッシに手を加えます。いくつかの選択肢があります。
①防音ガラスのサッシに代える
比重を高めた素材を加えたガラスでできた、防音ガラスタイプのサッシに代えます。
既存のサッシで対応できる場合もありますが、サッシ自体を変えるには工事が必要になります。
ただ、騒音はガラス面のみならず、サッシ枠のすき間やサッシ枠の振動を通じて入ってきます。
ガラスのみの交換ではこれらに対応できませんので、遮音性能は 高くありません。
それから、マンションの場合はサッシの工事が管理規約違反になることもあります。管理組合に確認してください。
②内窓を付け加える
既存サッシの15センチほど内側に、もう一枚のサッシを入れる方法です。結果的に二重窓となります。二重窓の間にできる空気層が効果的に遮音します。
具体的には、
外・内、ともに通常タイプのサッシ
外は通常タイプ、内は防音ガラスタイプ
外・内、ともに防音ガラスタイプ
という3つの選択肢があります。いちばん最後のものがもちろん最強ですが、2番目のものでも鉄道や道路の騒音には十分効果的に対応できます。
二重窓には、部屋の保温性を高める効果もありますので、冷暖房費が安くなるという副次的メリットもあります。
屋根や壁に吸音材を入れる
これは特に、自衛隊や在日米軍の基地周辺で、一戸建ての家に住んでいる人たちを対象としたものになります。
そうした場所では、ときにかなりの低空飛行をすることもある軍用機から、すさまじい騒音が上から降ってきます。
これには、以下のような強力な対処が必要になります。
壁には、内側の壁材をはがし、断熱材をグラスウールなど吸音性の高い素材に換え、やはり吸音性にすぐれた石膏ボードを張りなおします。
屋根については、天井からアプローチしてグラスウールや石膏ボードを入れ、天井を張りなおします。
さらに、先ほど見た「サッシの二重窓化」も行います。
たいへんな工事になりますが、基地周辺であれば防衛省が助成金を出してくれます。
基本的な工事だけなら、原則として全額出してくれます。基地近隣の自治体が窓口になっていますので、該当する方は確認してください。
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